SIMO-ICAと適応ビームフォーマを用いた優決定ブラインド音源分離

林 一幸 (0451097)


ブラインド音源分離 (BSS) とは, 複数の未知音源が空間を伝達することにより混合された観測信号の情報のみを用いて 元の音源信号を推定する技術である. 本発表では,観測信号数が音源信号数よりも多い 優決定問題におけるブラインド音源分離手法について議論する. 特に,複数のSingle-Input Multiple-Output (SIMO)モデルに基づく 独立成分分析(ICA) (SIMO-ICA)を用いて並列に処理を行い, 精度の高い信号を選択するアルゴリズムを提案する.

SIMO-ICAは混合信号をモノラル信号にではなく,個々のマイクロホンの位置での信号である SIMOモデル信号に分離することができる.それゆえSIMO-ICAは分離の後でも 個々の音源の空間的性質を保持しており,音源の到来方位の推定が可能である. この特徴により,非目的音成分の無音区間において目的音成分の SIMOモデル信号を推定することが可能となり,推定されたSIMOモデル信号を用いて 出力信号群の中から最も分離精度のよい信号を選択することができる. また選択された信号を用いて適応ビームフォーマ(ABF)を構成することで効果的に雑音除去を行う. 実環境における音声分離実験より,提案法を用いることで より精度のよいSIMOモデル信号をブラインドに選択出力可能であることがわかった. さらにABFを接続することで,従来のICAやABFを上回る高い雑音除去性能が得られることが明らかとなった.