装着した3次元磁気センサと姿勢センサを用いたウェアラブルユーザの自己位置推定

濱口 明宏 (0451094)


ユーザの現在位置に応じた情報の提供サービスを広域環境で実現するため,様々なユーザ位置推定法が従来から提案されてきた. 特に屋内では,環境中に離散的に設置したインフラから取得した絶対位置と,ユーザの歩行動作を自律的に計測した相対移動量を組み合わせてユーザの位置を推定することが多い. しかし,環境インフラを利用する手法は利用可能範囲に比例して設置コストが増大するといった問題がある. また従来の自律計測手法は,ユーザの歩数計測に基づいて移動量を推定するため,歩行動作の誤検出や推定された歩幅と実際の歩幅の相違により誤差が蓄積しやすいといった問題がある. そのためこれらの手法を組み合わせる場合,自律計測の精度が向上すればインフラの設置密度を下げることが可能となり,コストの削減が期待できる.

そこで本論文では,インフラの設置コストの削減を目的として,自律計測による位置推定の誤差要因の一つである歩幅の推定精度を向上させることで,相対移動量推定の高精度化を試みる. 具体的には,ユーザが装着する3次元磁気センサで直接両足の相対位置姿勢を計測し,両足接地時の両足の踵の相対移動量を推定する. 次に,腰に取り付けられた姿勢センサから得られる絶対姿勢を用いて,世界座標系におけるユーザの相対移動量を計算し,それらを逐次的に加算することで自己位置を推定する. その際,歩行動作の個人差による推定誤差を軽減するため,キャリブレーションを行う. 提案手法の有効性を確認するため,推定精度の定量的評価及び,広域環境における自己位置推定実験を行った.