拡散テンソル画像法(DTI)は、核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて水分子の拡散を画像化 する手法である。これまで行われてきたMR拡散テンソル画像や拡散の不等方性に関する研究では、 一般的な臨床用MRI装置を用いて拡散強調MR画像を計測している。しかし得られる拡散画像の空間 分解能は数ミリメートルであることから、より微細な構造の情 報を得るには十分ではない。本研究では、100ミクロンオーダーの空間分解能で形態情 報を得ることができるMR顕微鏡を用いた拡散テンソル計測(MRM-DTI)を目的とする。計 測では拡散強調勾配(MPG)を用いるが、コイルや電源の特性等からMPGの印加方向によっ て一様な結果が得られない問題点がある。そのような問題に対し、MRM-DTIにおいてこ れまでに行われた較正法を追試した。次に不等方性を示すファントムを作成し、等方性ファントム に対する較正結果を用いて計測したが、同程度の精度向上は見られなかった。そこ で、不等方性ファントム内に設けた、等方性と見なせる領域に対して前述のb値の 較正法を応用する新たな方法を提案した。また、画像情報のみを使用する異なる較 正法も考案し、較正精度の参照となる臨床用のMRI装置で撮影した結果と比較した。