車車間通信を用いた渋滞情報収集と目的地への到着時刻予測手法の提案

寺内隆志 (0451077)


本研究では,道路を走行する各車両が道路の混雑状況を自律的に収集し目的 地への到着時刻を推測できるようにすることを目的として,車車間通信による 情報管理・伝播方式を提案する.

提案方式では,対象道路網をエリアと呼ばれる部分領域に分割し,各エリアへ の入口,出口の組で特定される経路ごとに,各車両がその経路を通過する時間 を計測し,この情報を他の車両と車車間通信を用いて,交換,収集,集計する ことで,各経路に対する通過時間の統計情報を生成する.車車間通信による統計 情報生成の際には,異なる車両を経由して同じデータが重複して受信され集計 されるという問題が起こる.その問題に対し,提案方式では,統計データを,指 定された時間間隔および車両台数ごとにブロック化して管理し,各ブロックに 送信元車両のIDリストから計算されるハッシュ値を付加することで,重複集計 をある程度回避できるようにしている.また,統計情報が肥大化すると,各車 両が限られた通信帯域のもとで全データを送信できなくなり,統計情報の伝播 が制限されることが考えられる.提案方式では,統計情報を幾つかのカテゴリ に分類し,重要なカテゴリの情報をより高い優先度で送ることで,その問題を実 用上問題ない程度に解決している.

提案方式の有効性を評価するため,車車間通信のプロトコルおよび集計・管理システム を設計・実装し,交通流シミュレータNETSTREAMに組み込み,実験を行った. 結果,車車間通信を用いた統計情報の作成・交換が十分に可能である ということを確認した.