NAIST-IS-MT0451063: Sasaki Nozomi



 

染織物の分光反射率計測に基づく退色過程のモデル化と原色推定

佐々木 望 (0451063)


情報処理技術を用いて文化財を分析しようという試みが近年盛んになっている. 文化財の元の状態を知ることは,レプリカの作成や,学術研究の面から必要であ る.多くの文化財の中でも染織文化財は元の状態を失いやすく,原色を知 ることが重要であるが, 現在,染織物の原色は学芸員の経験や,破壊を伴う化学分析によって得られた染料からの 推測で行われているため,原色推定は,長い経験と知識が必要な技能とな っている.

本発表では,各種染織物サンプルの退色過程の分光反射率を用いた,染織物の原色推定手法を提案する. 提案手法は,メタルハライドランプでサンプルを退色させ,その過程での分光反 射率の変化をモデル化する.分光反射率取得のための照射光には可視光を用い, 対象染織物の再退色の促進を抑える. 原色推定は,推定の対象がどのモデルに属すかをクラスタリングを用いて決定し, 対象にモデルを適用することで行う.

提案手法の有効性を示すため,複数のサンプルの原色を推定し,退色前の色との 色差を算出した. 平均色差は実用色差の範囲内にあり,本手法の有効性を示すことが出来た.