コンセプトマップを用いた 要求抽出会議における合意形成支援

小山 裕典 (0451058)


ソフトウェア開発における要求抽出とは,要求分析者が顧客から要求を聞き出す作業を指す.一般にこの作業は,分析者が顧客にインタビュー形式で要求を聞き出すことに終始し,相互の認識の不一致を解消する機会が少ない.後から認識の不一致が判明すれば,その時点で要求に変更が発生し,手戻りコストが発生する原因となる.そこで本論文では,ソフトウェア開発の要求抽出会議において,要求分析者と顧客の認識不一致を解消するための会議支援手法を提案する.提案手法では,要求抽出会議において,インタビューで抽出した要求項目について,分析者と顧客がそれぞれ図を作成し,それを媒介として議論を行う.これにより分析者と顧客の双方に発言機会を提供する.図の記法には主に初等教育分野で用いられるコンセプトマップに着目した.これによりソフトウェア開発の専門知識をもたない顧客でも容易に作成でき,既存の要求を手がかりに考えを視覚化することができる.提案手法の有用性を検証するために,既存の要求に対して,詳細な要求を議論から抽出する実験を行い,口頭で行う会議と比較した.その結果,分析者と顧客が共に積極的に議論に参加し,相手との解釈の不一致に気づいた上で要求を詳細化できることを確認した.