隠れマルコフ確率場にもとづく超解像

兼村厚範(0451040)


同一の対象を撮影した複数枚の観測画像をもとに, より高い解像度の画像を生成する超解像問題において, 隠れマルコフ確率場事前分布とその周辺化をとりこんだアルゴリズムにより 高解像度画像を推定する手法を提唱する. 従来より,きれいな高解像度画像画像を推定するためには, 事前分布としてエッジ保存性を持つものが適していることが知られていたが, ボケた画像を推定してしまう単純な事前分布(ガウス分布など)も その計算の容易さゆえにつかわれてきた. また,観測過程の同定に際して高解像度画像を周辺化することで 精度が高まることが示されているが, 一般に周辺化には困難な積分計算がともない, 単純な事前分布でしか実行されてこなかった. そこで,本論文では,エッジ保存性を持つ隠れマルコフ確率場を事前分布とし, かつ周辺化をおこなうことで高精度の劣化過程同定と高解像度画像推定の両方を 実現する手法を述べる. 本手法における推定計算は, 厳密に実行するには指数オーダの時間計算量が必要であり 現実的な時間での計算が困難であるため, 何らかの近似が必要である. そこで,EMアルゴリズムの事後分布を因子化混合ガウス分布にとることで 計算を簡略化し,なお残る計算困難性をさらなる近似で解決することで, すべての計算を多項式オーダに収める近似手法を開発した. 本手法を人工的に作った観測画像に適用し,その有効性を確認した. また,本手法と既存の超解像手法であるガウス分布を事前分布として用いる超解 像手法とを比較し,その優劣について議論する.