CIとクリッピングを用いたOFDM信号の効果的なPAPR削減
岡本 弘輝 (0451027)
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)は地上波デジタル放送にすでに用いられ, 次世代の無線移動通信にも有望な方式である. 本方式は, 複数の狭帯域信号を周波数多重し, 並列伝送を行うことで, システム全体で高速な情報伝送を可能にする方式である. OFDM方式は, マルチパス伝播環境における遅延時間の広がりによる波形歪を防いだり, 周波数利用効率に優れているが, 一方で, 独立に変調された搬送波が重畳されているために, ピーク電力対平均電力比(Peak to Average Power Ratio:PAPR)が高くなるという欠点がある. その結果, 非線形歪みによる信号劣化が生じたり, アナログ/デジタル変換回路の複雑化を招くなどの問題を生じさせる. この問題はまた, 電池の耐用時間を短くすることから, 特に携帯端末にとって重要な問題である. このことを防ぐために線形領域の広い増幅器を利用しようとすると, 装置の大型化やコストの増大を招くため, PAPRを出来るだけ抑える必要がある. つまりOFDM信号のPAPR削減は経済的でかつ使い易い移動通信実現に極めて重要である.
本研究ではOFDM通信方式のPAPR問題に対して3つの手法を用いてアプローチを行う。1つ目は、CI(Carrier Interferometry)符号とクリッピングを用いる方法である。CI符号を用いることで、OFDM信号の各サブキャリアに一定量の位相回転を加え、足し合わせた時に波のピーク位置がずれ、合成波にピークが現れる確率を減らすことが出来る。そのようにしてピークを減らした信号に対して、さらにクリッピングによって残ったピーク信号を切り取り、PAPRの削減を行う手法である。2つ目は、CI符号を用いず、クリッピングによってのみPAPRの削減を行う手法である。3つ目はそのクリッピングを繰り返し行い、PAPRを削減する手法である。これら3つの結果を評価する基準として、シングルキャリア伝送方式のPAPRを用いる。同一のデータ数から求めたシングルキャリアのPAPRを元に、3つの手法でその値までPAPRを削減した時のBERの劣化をそれぞれ求め、その結果から、どの手法が最も効果的にPAPRを削減出来るかについて研究を行い、その結果を発表する。