近年の安価な高速ネットワークの普及に伴い、インターネットにおいて音声や映 像を利用した多対多のリアルタイムコミュニケーションシステムが注目されつつある。 これらのシステムは、電子会議やチャット、オンラインゲーム上でのコミュニケーションなど様々な 適用分野が考えられる。しかし既存のシステムは、コミュニケーション空間に 複数の話題が並列して進行することを許容しない会議型のコミュニケーション スタイルである。そのため雑談を目的としたコミュニケーションにおいて重要となる 発言の自由度や会話の発展性が低いという問題点がある。
そこで本研究では、コミュニケーション空間内に複数の話題が並存することが可能な、 「場」共有型コミュニケーションを実現する多対多音声チャットシステムを 提案し、実装した。提案システムは、3Dサウンドを利用することでコミュニケーション空間 に距離と方向の概念を導入し、現実世界と同様の複数の会話が並存でき る環境を実現する。
既存のデバイスや3Dサウンドを実現するライブラリの 性能上、複数の会話が並存した場合会話の識別が難しくなるが、 興味のある会話の音源を既存の環境で聞き取りやすい位置に移動し、 視覚情報を利用して音源定位を補助するというアプローチで解決を図った。 本提案手法の有効性を評価実験によって確認した。