本研究では,枯草菌ゲノム上のDnaA結合領域を,2つの方法で計算機を使い抽出する事を試みた. まず,遺伝子間領域に保存されているDnaA boxを,枯草菌と近縁種のゲノム配列に基づき, Phylogenetic Footprinting法によって比較解析し,既知の8箇所に加えて,新たに14箇所を予測する事が出来た. 次に,DnaA boxがクラスタを形成するとDnaA蛋白質がより強く結合するという実験結果に基づき,そうした領域を抽出したところ,さらに8箇所を予測する事が出来た.
このようにしてDnaA蛋白質が結合する可能性が予測された計22箇所の領域について, ゲルシフトアッセイによって,実際にDnaA蛋白質が結合するかを検証したところ,新たにywcI vprとgcp ydiF領域に結合することが明確に示され, 加えて,10箇所の領域にも結合する可能性が示された.また,ywcI vprとgcp ydiF領域のDnaA boxはともに近縁種のゲノム配列にも保存されていた.
こうした結果に基づき,枯草菌ゲノム上でのDnaA結合領域の分布とその役割について考察する.