単眼特徴時系列データからの頑健な物体構造復元のための因子分解アルゴリズムの比較

野村智和 (0251091)


コンピュータビジョンの研究分野において,単眼カメラにより得られる二次 元画像時系列データから,観測物体の三次元構造情報を復元しようとする研 究は,工学的にも有用で,かつ数理的にも興味深いために盛んに研究されて きた. 様々な復元手法の中で,安定な数値解が得られる有用な手法としてTomasiと Kanadeが提案した「因子分解法」が知られている。しかし、オリジナルの因 子分解法には,特徴時系列データにアウトライア,すなわち観測過程の影響 上生じた特徴時系データの外れ値が多く含まれている場合には,復元情報の 誤差が増大するという問題が残されていた。その後,この問題点に取り組ん だ手法がいくつか提案された. 本論文では,これらの手法の内,対照的な2つの手法を取り上げ,それらの アウトライアに対する頑健性を比較することが目的である.具体的には,ロ バスト推定法に基づいた因子分解法(ロバスト推定法とする)と,ランダム サンプリング法に基づいた因子分解法(RANSAC法とする)を取り上げた. 本論文では,数理的見通しを良く議論するためシミュレーションデータを用 いて性能比較を行った.用いたデータは,できるだけ単純ではあるが,実環 境におけるアウトライアの発生状況を反映するよう工夫した. 性能比較の結果,RANSAC法の方が安定して復元誤差を小さくできる傾向にあ ることが分かった.但し,計算量を実用的な範囲で押さえた場合の評価を行 わねばならない.