そこで本研究では,人間の足底触覚のメカニズムを解明するため,歩行路面と足底で発生する滑りに着目する. 人間の歩行時の足底面皮膚変形を計測可能な装置を開発し,実際に足底面においても初期滑りが発生することを確認した. また,触覚応答と等価な皮膚内応力計算に必要な弾性接触モデルの妥当性を検証するため,滑りに対する安全度を表すスカラーパラメータの一つである滑り余裕を推定することで本モデルの妥当性を確認する. 踵の滑り余裕推定精度はいずれも3%程度の誤差で推定が行なえ,踵弾性球モデルの妥当性が示された. 一方,爪先の滑り余裕推定ではいずれも足指接触を伴い, 推定誤差が増大する. そのため,爪先の滑り余裕推定手法における計算式と実験データから導出できる実験式の比較を行い,実験式の導出に最小二乗法を用いることで最適なパラメータを決定した. さらに,滑り計測の有益なデータを用いることで足底触覚による滑り知覚の可能性を検証する.
以上により, 安定な二足歩行ロボットの制御指針が得られるだけでなく,足底触覚情報を利用した滑り安定な義足の開発,リハビリテーションにも役立つと考えられる.