生命の起源につながる代謝系の推定

山川 明子 (0251154)


オパーリンが1924年に、生命の発生過程として、無機物が有機物そしてより複雑な系へと自律的に変化してゆく過程、すなわち、化学進化を提唱して以来、生命の起原に関する現代的研究がさまざまな形で行われて来ている。例えば、前生物的環境条件の下で特定の有機物が無機物から生成されうることを示す研究が個別に数多く行われている。しかし、それらの異なる有機物や原料となった無機物を包括的に関連付け、生命の起原に至る過程を明らかにしようとする研究はまだなされていない。

そこで我々は、生命維持の必須要素である代謝系の形成に着目し、前生物的環境下において存在し得た代謝系(コア代謝系)の推定を試みた。手法として、先行研究で合成が確認された有機物を収集し、続いてそれらを結び付ける変換経路を、現生生物の代謝系を参考にして推定した。その結果、生物の細胞内物質代謝で中心的位置を占めるTCA回路の中間物質や、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸といったアミノ酸が高エネルギーを消費すること無く相互に変換しうる網目様の代謝系がコア代謝系の候補として浮かびあがって来た。