ヒトゲノムにおけるLTRエレメントの機能

田中 友美子 (0251147)


ヒトゲノムには、LTRエレメントというレトロウイルス由来の散在反復配列が存在することが知られている。LTRエレメントは進化の過程で不活性化につながる変異を受けているため、そのほとんどがもはやレトロウイルスとしての機能を失っていると考えられている。しかしその一方で、LTRエレメントに含まれるレトロウイルス遺伝子が発現している事例や、LTRが組織特異的なプロモーター活性を保有している事例も、近年になって多数報告されるようになってきた。このような報告を受け、本研究では、特にLTRエレメントと遺伝子の機能的な係わりに注目し、LTRエレメントの新たな機能を探ることを試みた。まず、遺伝子近傍領域でのLTRエレメントの分布を調べた結果、LTRエレメントは遺伝子の近傍領域において遺伝子3′側の逆鎖に偏って多く分布することが示され、LTRがプロモーターとしてアンチセンスRNAを発現するなどの機能を持つため、この領域に選択的に保存されているのではないかと考えられた。またLTRエレメントから転写された可能性のある完全長cDNAの中に、VGCNL1遺伝子のエキソン領域と相補な配列を持つものが存在した。このような転写産物は、アンチセンスRNAとしてVGCNL1のmRNAと対合することにより、転写後の遺伝子の発現制御に関与している可能性があり、LTRエレメントがアンチセンスRNAの転写プロモーターとして、遺伝子の発現制御機構の発生に係わっている可能性が示唆された。