標準ギブスエネルギー変化と遺伝子の致死性を用いた代謝パスウェイからの特徴抽出
田中道博 (0251146)
全ゲノムが決定された生物種の代謝系を再構築する際には、その生物種が持つ酵素の反応を用いて生合成経路や分解経路を探索する必要がある。京都大学のKEGG (Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes) システムでは、2つの化合物間の可能な反応経路を計算するためのツールを提供しているが、単純なグラフ探索アルゴリズムで反応経路を計算するため、大量の可能性が抽出されることが多い。この中には生物学的にあり得ない経路も含まれていると考えられるので、何らかの生物学または生化学的な性質を用いることによって、意味のある経路を抽出する必要がある。
本研究では、経路抽出のための性質として反応のギブス自由エネルギー変化と必須酵素遺伝子に着目した。まず、KEGG/LIGAND データベースに登録されている化合物のギブス自由エネルギーを網羅的に計算し、その結果を用いて、同じデータベースに登録されている反応のギブス自由エネルギー変化を計算した。その値を元にKEGGの経路探索アルゴリズムの出力をスコアリングする仕組みを導入し、その結果を考察した。また、既知の代謝パスウェイ上での反応のギブス自由エネルギー変化と必須遺伝子の分布を解析した。その結果、必須遺伝子と大きなエネルギー変化との若干の相関は観察されたが、スコアリングシステム自体の結果はそれほどよくならないことが判明した。今後は、他の性質も含めてさらに解析を進める必要がある。