細胞は、小胞体特異的なストレス応答機構をもち、異常タンパク質蓄積による小胞体ストレスを回避しようとする。また、強いストレスに対してはアポトーシスを誘導する。その誘導経路の分子機構の全貌は、いまだ未解明であるが、ストレスセンサーであるIRE1とTNFシグナルの下流でアダプター分子として機能するTRAF2が関与しているという報告がある。本研究では、構造生物学の立場から、両者の相互作用の構造的基礎の詳細を明らかにして、この情報伝達経路の理解を深めることを目的として研究を始めた。
マウスIRE1-a and -b and 酵母IRE1pについて、ドメインごとのコンストラクトを作成し発現条件の検討を行った中で、最も多く可溶化しているIRE1b-RNaseドメインについて大量培養を行い精製系を確立した。TRAF2に関しても同様にコンストラクトを作成し大量培養・精製を行った。また、精製タンパク質を用いての結合実験、溶液中における構造状態の解析を中心としたタンパク質の物理化学的性質を測定・検討した。