枯草菌の染色体複製開始の制御におけるYabA蛋白質の機能解析

神ア 崇彰(0251139)


枯草菌ゲノムライブラリーを用いた酵母2ハイブリッド法による染色体複製蛋白質と相互作用する蛋白質の検索の結果、YabA蛋白質は染色体複製のイニシエーター蛋白質であるDnaAとDNA polymerase IIIのサブユニットである DnaNの双方と相互作用する蛋白質として同定された。yabA破壊株や、DnaAまたはDnaNの一方と相互作用を失った変異型yabAを持つ株で複製開始が早まることが観察された。興味深いことにYFP-YabA融合蛋白質の細胞内の挙動はレプリゾームと一致していた。これらの結果より、YabAは複製開始前に既に蓄積されているDnaAの活性を抑制し、複製開始後、活性型DnaAを不活化することが提唱されている。しかしながらYabAとDnaA、YabAとDnaNの相互作用は酵母2ハイブリッド法による解析でしか確認されておらず、そのため本研究では細胞内における3者間の相互作用の解析を試みた。始めにショ糖密度勾配遠心分離法を用いてYabA、DnaA、DnaN複合体の解析を行った。その結果3者は異なった位置に検出され、相互作用は見られなかった。このことより、野生型YabAとYFP-YabAの細胞内での挙動が異なることが示唆され、実際、YFP-YabA量は、野生型に比べて顕著に増加しており、またショ糖密度勾配で高分子量側へ移行していた。次に、6xHis-YabA発現株を用い、Hisタグを利用して複合体を精製し、DnaAとDnaNの存在を調べた。まず、6xHis-YabAの発現量を野生株と同じレベルにしてin vivoクロスリンクを行い、YabA複合体を精製したが、YabAが溶出される画分にDnaA、DnaNを見出すことはできなかった。そこで、6xHis-YabAの発現量を過剰にして、同様の実験を行ったところ、YabAの溶出画分に、DnaA、DnaNが見出されが、その量は細胞内のDnaA、DnaNの0.1%程度であった。これらの実験結果に基づき、枯草菌の染色体複製開始の制御におけるYabAの機能について、新たなモデルが考えられた。