酵母2ハイブリット法を用いた枯草菌必須タンパク質間の相互作用解析

海堂 剛央 (0251138)


枯草菌はゲノム配列の解析によりタンパク質をコードする4100の遺伝子の存在が明らかになっている。
個々の遺伝子を破壊した変異株作製プロジェクトが行われ、その結果271遺伝子が必須であることが
示された。しかし、染色体複製、タンパク質合成、細胞分裂など細胞増殖に必須なプロセスを繋げる
タンパク質ネットワークはその存在が予想されているにもかかわらず、未だに不明である。

本論文では、そのネットワークを解明するために、271の必須遺伝子を含む295遺伝子の産物間の相互
作用を、酵母2ハイブリット法により網羅的に解析した。大規模な酵母2ハイブリット法は系統的な
タンパク質間相互作用地図の作成のために広く用いられているアプローチであるが、かならずしも
全ての相互作用を検出できず、一方、生物学的な意味のない偽陽性を検出するという問題点を抱えて
いる。この問題を改善するため、正しい立体構造がとれるように全長のタンパク質をコードするように
全ての遺伝子をクローン化し、PCRによるエラーを除去するために配列を確認した。さらに、実験上の
精度を上げるため全てのクローンの組み合わせ(295×295)について一対一の酵母2ハイブリット解析
を行った。また、ポジティブクローンの一次スクリーニングの後、その再現性も確認した。

その結果、必須タンパク質間で196の相互作用を検出した。この結果を評価するために本研究で検出
された相互作用を、文献情報の検索によって得られた、実験的に確認されている相互作用と比較した
ところ、41が既知であり、155が新規の相互作用であった。複製、細胞分裂、DNA修復、脂質代謝など
異なる細胞プロセスに属するタンパク質間の相互作用も同定されており、本研究で作製した必須タン
パク質間の相互作用地図は様々な細胞増殖の基本プロセスを繋げるネットワークを明らかにするため