近年,歴史的文化財の情報,とくに形状や表面の材質特性をディジタルコンテンツとして保存し、公開する試みが盛んに行われている。その中,実物体の反射特性をコンピュータ上で高い写実性をもって再現したい,また電子博物館など仮想環境の照明状況に合わせて表示したいなどの要求が高まっている。このほか,コンピュータグラフィックス(CG)においては仮想物体を実物体のように表現することは常に重要なテーマであり,多くの研究が行われている。これらの要求のために実環境における物体表面の反射特性を正確に計測し,分光反射特性など実物体の固有情報を正確に記録しておくことが必要となる。
本研究では,分光画像を用いて,反射成分を波長ごとに拡散反射成分と鏡面反射成分に分離し,各反射パラメータを推定する手法を提案する。実物体の反射特性を正確に計測するためにイメージ分光器を組み込み、また光源の位置による物体表面の反射特性の変化を調べるために光源を回転させる計測システムを構築する。さらに,物体表面の全周データを計測するために物体を回転させて計測を行う。本システムより取得された分光画像に対して計測時の照明環境や入力デバイスによる影響を除去し,物体固有の分光反射率や鏡面反射率係数などの反射パラメータを波長ごとに推定する。この方法を用いることにより,実物体の反射特性を正確に計測し,仮想環境の照明状況に合わせて実物体に最も忠実な再現が可能となる。