近年,電子カルテの普及に伴って,蓄積されたデータを2次利用した診療支援が期待されている.
本研究では,1患者の診療行為に関する詳細が記述された診療録を用いて,
症状・所見が類似した診療録をデータベースから検索できる手法を開発し,システムに実装した.
個々の診療録には,カテゴリーデ−タ,順位データが混在しているが,木構造に配列すれば構造化文書として
表現できる.
この木構造診療録の特徴を捉えた類似検索手法を開発することが本研究の課題である.
木構造診療録の特徴として「下位ノードは上位ノードの詳細所見である」という点があげられる.
よって,木構造診療録を類似検索する為には,上位ノードに対する類似性を特に重要視する必要がある.
そこで本手法では,最近接類似検索を基に,
下位のノードを根とした部分木における類似度(0〜1.0)を順次加重平均していくことにより
2つの診療録間の類似度(0〜1.0)を求める.そして,入力診療録に対する類似検索結果として,
過去の診療録を類似度の降順に並べ変えて出力する.
本手法を医療現場で実際に使用されている木構造診療録を用いて評価した.
この評価実験によって,本システムの出力は,一方で医師の類似判定と近い結果を与えるとともに,
他方で医師の経験・価値観にとらわれない結果をも示すことを確認した.