CDMA方式の上り回線における情報多重伝送と多元接続干渉の低減に関する研究

保科 浩二 (0251108)


第3世代移動体通信システムに採用されたCDMA方式は,周波数利用効率が良いという 特長をもつ. CDMA方式の上り回線では,信号間の同期を揃えることが困難であるため,他ユーザの 信号が干渉となる. これが,システム容量の向上に制限となる. 上り回線において,多元接続干渉を低く抑えるための方式や周波数利用効率 を向上させる伝送方式の検討が行なわれている. 準同期CDMA方式は,同期制御と準同期拡散符号により,多元接続干渉を低減する方式 である. また,並列組合せSS(Parallel Combinatory/Spread Spectrum:PC/SS)方式は,複数の 拡散符号を並列に用いるマルチコード伝送の一種で,拡散符号の組合せを情報として用 いることで,通常のマルチコード伝送より周波数利用効率が向上する.

従来の研究では,周波数利用効率を向上させるためマルチコード伝送を用いた 準同期CDMA(QS-MC-CDMA)方式の検討がなされており,加法性白色ガウス雑音 (Additive White Gaussian Noise:AWGN)環境では従来の非同期CDMA方式より良好な 特性となることが報告されている. 本論文では,まず実際の移動体通信環境に近いマルチパスフェージング環境において, 準同期CDMA方式の検討を行なう. さらにマルチコード伝送よりも周波数利用効率が向上する並列組合せSS方式を用いた 準同期CDMA(QS-PC-CDMA)方式の提案と検討も行なう.

まず,非同期CDMA方式との比較においては,マルチパスフェージング環境においても, QS-MC-CDMA方式は良好な特性となり,CDMA方式の上りリンクで情報伝送速度の向上と ビット誤り率の低減において効果があることが分かった. 次に,QS-PC-CDMA方式とQS-MC-CDMA方式の比較においては,AWNG環境では QS-PC-CDMA方式はQS-MC-CDMA方式より良好な特性となることを示した. さらに,AWGN環境において1.5倍の情報量を送る場合,QS-PC-CDMA方式は, 多値レベルをQPSKから8PSKに上げた場合と比較して,電力を低く抑えることが できた.