背景パターンの変化を利用した透明物体の形状と屈折率の計測手法

辻田 美紀 (0251071)


電子アーカイブなどを対象に,実物体をコンピュータグラフィックス(CG)で実物体と同様の精度で再現するためには,物体の実際の形状や光学特性に基づいた再現を行なう必要がある.特に透明物体の場合には,光が内部を透過するため,背景の映り込みを正しく表現するには物体表面で起こる屈折率をモデル化する必要がある.しかし,透明物体の形状や光学特性の計測手法はまだ確立されておらず,形状や光学特性の正確なパラメータ化が難しいのが現状である.そこで,本発表では,透明物体に適用できる,形状計測の手法,及び屈折率計測の手法を提案する.

形状の計測は,シルエット法を用いて非接触で行う.透明物体の背景差分によるシルエット抽出は,透明物体を透過した部分が背景画像の模様や色と一致すると,背景とみなされてしまい,その領域はシルエットとして抽出されない.この問題点を回避するために,本研究では,背景にグレイコードパターンを用いて空間コード画像を生成し,背景差分を行う.一方,屈折率の計測については,従来は屈折率推定を形状計測とは別に行っており,処理の煩雑化や機器構成の複雑化という問題があった.本研究では,前述の手法で求めた物体の形状と光路を用いて,屈折率推定を行う.光路を求める際に,背景画像と計測画像を用いて対応点の検出を行う.対応点の検出は,形状計測の際に用いる空間コード画像を用いて行うため,本手法では形状と屈折率を同時に計測することができる.実験では,提案手法を用いて球状の透明物体を計測し,形状と屈折率推定を求められることを確認した.