エスクロー電子現金に基づく間欠接続を許容する個人間送金システム

為近 智行 (0251067)


本研究ではエスクロー電子現金に基づく間欠接続を許容する電子現金の個人間送金を実現する手法を提案する.これまで様々な電子現金が開発されてきたが,本研究で用いるエスクロー電子現金を含んだそれらの大半は常時通信環境を想定しており,電子メールなどの間欠接続環境を想定していない.間欠接続環境下での個人間送金を可能にすることで,送信者と受信者がそれぞれ都合のよい時間に送金操作を行うことが可能となり,さらにその操作をエスクロー電子現金に基づいて行うことで転々流通性や条件付き匿名性が実現できる.しかしこの実現には,通信情報が不着の場合や盗聴された場合のセキュリティ問題,取引中に他取引が生じた場合の問題,現金の特徴である即時決済性実現の問題を解決する必要がある.これらの問題に対し提案方式では公開鍵暗号方式を用い,時間に依存する取引識別番号で取引順序を管理し,送信者と受信者の間にサーバを挟んだ三者間取引とすることで解決を図った.さらに提案手法が上記の問題を解決できることを実装システムの評価と定性的評価で示し,実現可能性を明らかにしてその有効性を明らかにした.