しかしながら、積み上げられてきた理論の成果を元に近年量子計算機のシミュ
レーションを行うシステムの開発が活発になりつつある。特に、ソフトウェア
シミュレーションの研究は、広く行われている。
本研究がターゲットとしている、ハードウェアによるシミュレータも研究が行われているが、
量子計算を古典計算機でシミュレーションする場合に直面する計算資源や計算時間の
指数的増大によって、その開発は困難を極めるものとなっている。特に、ハードウェアの
性質上、計算資源の確保もしくは資源増大の抑制が重要な課題である。
本研究では、量子探索アルゴリズムと呼ばれる量子アルゴリズムをシミュレーションの対象とし、
また、qubit数の増加による計算資源の指数的増加に対して、状態空間を分割して複数の部分空間
を形成し、それらを一ずつ計算していくことで、計算資源の増大を抑えるという手法をとる。
この手法をとることで、計算資源をコンパクトな規模に抑えたまま大規模なシミュレーションが
可能になることを示す。
この計算資源を省面積に抑え大規模なシミュレーションを可能にするシステムの設計手法、
および、ソフトウェアシミュレータとの計算時間の比較などについて述べ、
本研究の提案する手法が量子計算シミュレーションのシステム構築において有効な手法であることを示す。