状態空間の分割を用いた省面積ハードウェア量子探索シミュレータ

高木 文博 (0251054)


量子情報科学という分野が世に出てから既にかなりの年月が経過してきた。
この間,様々な理論の提唱や実験が行われ、量子計算機の実現に一条の光を
もたらす成果も発表されている。ただし、現在は、数qubitの量子計算機が
実現されている段階であり、実用に必要不可欠と考えられている10qubitの
量子計算機は現在まだ開発されていない。

しかしながら、積み上げられてきた理論の成果を元に近年量子計算機のシミュ
レーションを行うシステムの開発が活発になりつつある。特に、ソフトウェア
シミュレーションの研究は、広く行われている。

本研究がターゲットとしている、ハードウェアによるシミュレータも研究が行われているが、
量子計算を古典計算機でシミュレーションする場合に直面する計算資源や計算時間の
指数的増大によって、その開発は困難を極めるものとなっている。特に、ハードウェアの
性質上、計算資源の確保もしくは資源増大の抑制が重要な課題である。

本研究では、量子探索アルゴリズムと呼ばれる量子アルゴリズムをシミュレーションの対象とし、
また、qubit数の増加による計算資源の指数的増加に対して、状態空間を分割して複数の部分空間
を形成し、それらを一ずつ計算していくことで、計算資源の増大を抑えるという手法をとる。
この手法をとることで、計算資源をコンパクトな規模に抑えたまま大規模なシミュレーションが
可能になることを示す。

この計算資源を省面積に抑え大規模なシミュレーションを可能にするシステムの設計手法、
および、ソフトウェアシミュレータとの計算時間の比較などについて述べ、
本研究の提案する手法が量子計算シミュレーションのシステム構築において有効な手法であることを示す。