常歩に習う腰回旋を利用した2足歩行のモーメント補償

白榮 健司 (0251049)


現在までに様々なヒューマノイドの歩行制御手法の提案が行われており,安定な 歩行が実現されてきている.近年,高速歩行時における鉛直軸周りのモーメント 補償の必要性が指摘されている.これに対し,腕を振る事によるモーメント補償 手法が提案されている.しかし,歩行中の腕作業において,腕を用いたモーメン ト補償手法は腕の自由な運動を制限し好ましくない.一方,人間はこのような問 題を考える事なく歩行作業を行う事ができ,人の歩行にはヒューマノイドの歩行 制御に応用できる有効な特性があると推測できる.しかし,従来のヒューマノイ ドの歩行制御手法はZMPなど工学的観点から作成された歩行パターンであり,人 間の歩行特性を考慮した歩行制御手法の提案は行われてきていない.

本研究では,近年運動科学の観点から研究が進んでいる特殊歩行「常歩 (なみあし)」に注目し,その運動解析を行う.その結果,常歩歩行においては 通常歩行に対し腰が逆回旋している事を確認する.そして,この腰の逆回旋運動 が歩行時の鉛直軸周りのモーメントを補償する事を示す.また,腰の逆回旋性を ヒューマノイドの歩行パターンに実装し,シミュレーション・実機実験にて足裏 に発生する鉛直軸周りのモーメントが減少する事を確認する.さらに,腰回旋の 運動を適切に制御する手法を提案し,既に作成された歩行パターンにおける鉛直 軸周りのモーメントが減少する事を確認する.