題目

金子 祐子 (0251026)


問題を解りやすく分割し個別に学習した後,それらを統括的に組み合わせるという 行動は,取り巻く複雑且つ動的な環境に素早く適応するためにヒトが獲得した方法 であるといえる。 近年,前頭前野に対する認知科学的研究が盛んに行なわれており,前頭前野が行動を 発生させる意思決定,行動計画,作業記憶の保持などの様々な高次機能に深く 関わっていることが明らかになってきている。 しかし,そのような階層的な学習機能に対応する脳内機構はまだ明らかになって いない。本研究では,階層的な学習の工学的手法として知られている階層型強化学習 のアルゴリズムをベースとした前頭前野の階層型強化学習モデルを提案し, それらの妥当性を検討するために階層型強化学習時の脳活動をfMRIにより計測した。 実験は,上位階層の学習,下位階層の学習が必要な条件で脳活動を計測し,それぞれ を比較した。

その結果,上位階層の学習が必要な条件で前部前頭前野(Frontopolar Prefrontal Cortex : FP-PFC)で,下位階層の学習が必要な条件で背外側前頭前野(Dorsolateral Prefrontal Cortex : DL-PFC)で優位な活動が見られた。このことから,DL-PFCで 分割された問題解決に必要な情報を保持し,FP-PFCでは分割した問題の監視、統合を していることが示唆され,提案されたモデルを支持する結果が得られた。