ウェアラブルコンピュータのための小型データベース構成法に関する研究

小野田 英樹 (0251025)


近年,計算機の小型化,高性能化に伴い,PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話などの小型コンピュータが急速に普及してきている.これら小型コンピュータは日を追うごとに小型化され,将来的にはGPS(Global Positioning System)やカメラを内蔵したウェアラブルコンピュータとして利用されると予想される.現在,ウェアラブルコンピュータが利用者のアシスタントとして動作する事への要求が高まりつつあるため,利用者が求めている情報を,状況に応じて小型コンピュータが 判断し,能動的に情報を利用者に提示する必要がある.同時に利用者の生活をさまざまな側面から記録したライフログを作成し,それらを有効活用することにより利用者に正確な情報の提供を行うことが可能であると考えられている.これらのデータを格納するストレージとして,低価格で大容量の小型ディスクを利用することが適当である. 利用者の欲求に応じた情報を提示するには,あらかじめ登録したルール(情報)に基づきシステムが動作し,ルールの追加,削除により,提示する情報の個人化を行うことが可能な能動型データベースの利用が有効である.能動型データベースは通常のデータベースに比べ,イベント発生時のルール動作条件であるコンディションの評価,およびコンディションが満たされ時に実行されるアクションが,処理を行っているシステム側で自動的に処理される.このため,データの参照など,ディスクアクセスが頻繁に発生しシステムの処理コストが高くなる.小型ディスクは,一般に用いられているデスクトップ用ディスクに比べ,シーク時間,回転速度が劣るため,データアクセス速度に問題がある.近年,小型コンピュータ上に能動型データベースマネージメントシステムを構築する研究が行われているが,それらは多様な小型コンピュータに対応できていない. 本論文では,上記三つの問題を解決するため,小型ディスク内のディスク制御プロセッサとバッファメモリを利用し,能動型データベースシステムを小型ディスク内で動作させることを提案する.小型ディスク内にデータベース管理システムを収めることにより,接続先ウェアラブルコンピュータへの共通インタフェースを提供することができ,多様なウェアラブルコンピュータで利用可能なシステムの構築が可能となる.さらに,小型コンピュータの負荷を軽減することが可能となる.提案するシステムでは,小型ディスク上に全ログを連続的に記録した追記型ファイルシステムの構築を行うことを目的としている.連続的にデータを格納し,提案手法を用いることによりアクセス待ち時間が減少し,データ処理能力が向上する.また,ディスク上に記録されている全ログをスキャンすることにより,過去から現在までの情報を検索するテンポラルクエリの実行,およびシステム障害時のデータベース復旧が可能となる.本手法の有効性を検証するため,従来のページ単位アクセスによるデータベースとデータアクセス性能に関して比較実験を行う.