Gタンパク質共役型受容体におけるSNP解析
岡本 康孝 (0251023)
ポストゲノムの流れはゲノムの構造研究から機能研究へと変化しており、
その中でも重要な位置を占めているのが遺伝子多型解析である。
また、遺伝子多型の中でも特にSNP
(Single Nucleotide Polymorphismの略、1塩基の違いを意味する)
が注目されている。
SNP研究の最終的な目標は、オーダーメイド医療の実現である。
そのためには個人の体質にあった副作用のない薬の開発が必要であり、個人の体質を
決定付けているSNPに関連した研究が注目を集めているのである。
そのような中でも、Gタンパク質共役型受容体
(GPCR)は、生体内において非常に重要な役割を担っているタンパク質であり、
GPCRの構造変化はシグナル伝達に重大な影響を与える可能性がある。
SNPによるアミノ酸置換によってリガンドやGタンパク質との親和性が変化すると、
下流にシグナルが伝わらなくなり(あるいはシグナルが過剰に伝わり)、その結果、
例えば、細胞の増殖を制御できなくなり、癌を引き起こしたり、
何らかの疾患に罹患する確率が増えたりする。
このように疾患との関連に着目すると、現在ある薬の半数近くが
このGPCRをターゲットとしていることもあり、
網羅的にそのSNPを解析することは、疾患のメカニズム解明の観点から非常に意義深いことである。
そこで本研究の目的を述べると、ヒトGPCRにおける網羅的なSNP発見を通して、
GPCR一般のSNPに関した知見を得ることである。
また、SNPの種類や数、ゲノム上の位置、構造領域(ドメイン)別分布などの特徴を解析することで、
疾患に関連したGPCR遺伝子を同定する際の一つの指針にすることを目標とする。
GPCR全体のSNPに関する知見として、ゲノム構造における
SNP分布の解析から、
SNPの分布の特徴が明らかになった。
また、コーディング領域におけるSNP解析やGPCR遺伝子の長さと
SNP数の相関解析から、
GPCRにおけるSNPの詳細な特徴が明らかになった。
疾患に関連した知見としては、
構造領域におけるSNP解析の結果から、
疾患に関連したドメインおよびそのアミノ酸置換パターンの
特徴を明らかにすることができた。
これらの知見は、GPCRにおける疾患関連遺伝子を見つける上で
ひとつの指針になると思われる。