車両型移動ロボットの軌道計画と車庫入れ実験

上野 貴史 (0251018)


 近年,産業界を始めとする様々な分野において自律移動ロボットの開発・研究が進められている. これらのロボットの移動機構としては,車輪やクローラー,さらに歩行用の脚等があるが,その中でも 車輪型移動ロボットについては,工場での搬送や,図書館での案内ロボットなど幅広い分野での応用が期待されている.

 このような車輪を移動機構に持つロボットは,その動特性から全方位移動型ロボットと車両型移動ロボットに分類できる. 移動ロボットに共通に求められる行為として, ロボットが現在置かれている位置から何らかのタスクを実行するための目標位置へ所望の姿勢となるように自律的に移動するといったことがある. この時全方位移動型ロボットであれば,その場で向きを変えることができるので目標位置との偏差を0にするように動けばよい. しかしながら,車両型移動ロボットの動特性は非ホロノミックな拘束を受けるため,単純に目標位置との偏差を0にするように動くのではなく, 切り返しによっていったん目標位置から遠ざかるような行動を取ることによって,姿勢を合わせる必要がある. このように,非ホロノミックな拘束を受ける車両型移動ロボットは通常の線形制御則によって軌道を生成することができない. そこで,本研究では,この非ホロノミック拘束を受ける車両型移動ロボットを用いて,任意の初期位置から設定された目標点へ所望の姿勢角になるような軌道計画手法を提案し, その利用例としてロボットの車庫入れ実験を試みた.

 本研究の提案手法は,ロボットが取ることのできる行動の自由度を限定することにより,軌道計画を非線形最適化問題として定式化し, これを最急勾配法の概念を利用した数値探索手法により解くことで,目標点までの軌道を生成するといったものである. 通常,車両型移動ロボットは左右の操舵とその大きさ(操舵量),さらにこれらの動作を実行する時間を決めることによって1つの軌道を生成することができる. したがって,移動ロボットはこれらの要素が絡み合った極めて大きな自由度を持っている. 本研究では,これらの自由度うち旋回半径の大きさ(操舵量)は固定し,これらの行為の実行時間に着目することによって, 自由度を意図的に制限した後,数値探索により目標点までの軌道を生成する手法を提案する.

 このような提案手法に対し,単純な移動ロボットのモデルを用いたシミュレーションを行うことにより,その有効性を検証した. さらに,実際に車両型移動ロボットを用いて実機実験を行い,軌道計測を行った後, 残った自由度を用いて,線形の制御則を付加することにより誤差の補正を行うフィードバック手法を考案した.