胸腔鏡,腹腔鏡手術に代表される低侵襲手術の増加に伴い,術者には高度な技術と豊富な経験が求められる. 特に肺の疾患は近年増加傾向にあり,手術訓練や手術シミュレーションの必要性がこれまで以上に高まると考えられる. しかし,肺手術の訓練シミュレータで力覚提示を伴ったものはこれまで報告されていない. 提案モデルでは,手術訓練の重要要素の1つである肺の力覚を,ヤング率やポアソン比の物理特性による反力, 肺内圧の変化による反力,呼吸による反力により表現した.
肺モデルへの接触に伴う内圧の変化,および呼吸による反力を知覚可能かについて実験を行った. 実験より肺内圧の変化による反力,呼吸による圧変動をそれぞれ強調することで,力覚変化の知覚が可能であることを確認した.
これらの実験から,今後手術シミュレーションへの応用を行う上で,本モデルで提示する力覚モデルは有用であるといえる.