核磁気共鳴顕微鏡を用いた弾性率分布測定システムの開発

阿賀俊幸 (0251002)


生命科学の分野においては、遺伝子をノックアウトした生物の形態を観察することで、 生体組織形成に関わる遺伝子を解明する研究が進められている。 遺伝子をノックアウトした組織は、形態だけではなく物理的属性である弾性が 変化する場合もあり、形態情報と共に弾性率を計測することに意味がある。 また、再生医療の分野では人工軟骨等に関する研究が進められており、 埋め込み後の弾性率分布を非侵襲的に測定できるような装置の開発が望まれている。 これらの研究で扱われるサンプルはマウス胎児などの小動物であることが多く、 数十〜数百ミクロン程度の空間分解能で計測する装置が必要となる。 生体組織の弾性率を形態情報と同時に測定できる手法として磁気共鳴画像装置 (MRI: Magnetic Resonance imaging)を用いた磁気共鳴弾性画像(MRE: MR Elastography)法がある。本手法は近年臨床用MRIを用いて研究が進められているが、 その空間分解能は1mm以上と微細構造を測定するには十分ではない。 そこで本研究では、核磁気共鳴顕微鏡を用いて高い空間分解能で 弾性率分布を測定可能なMR弾性顕微鏡システムを開発した。 今回の発表では、まずシステム構築のために開発した外部加振装置及び MRE用撮影パルスシーケンスを紹介し、 次に開発したシステムを用いて数種類の弾性体を対象とした弾性率分布測定実験 の結果を報告する。