全方位画像センサを用いたネットワーク対応型のテレプレゼンスシステムと遠隔監視システム

森田真司 (0151110)


テレプレゼンスや遠隔監視は,バーチャルツアーやロボットの遠隔操縦,遠隔共同作業などさまざまな分野で利用が可能である.テレプレゼンスや遠隔監視では,ネットワークを用いて,遠隔地の様子を広範囲に,かつ臨場感豊かに伝送することが重要となる.従来のテレプレゼンスや遠隔監視では,回転カメラを用いる方法や全方位画像センサを用いる方法が提案されている.前者においては見回しに機械的な時間遅延が生じる.これに対し,後者においては観測者の視線変化からその方向の画像提示までの時間遅延が少ないが,全方位画像センサで撮影した全方位画像を直接,計算機に伝送しており,ネットワークを介した実装には至っていなかった.特に遠隔監視においては,ネットワークを用いなければ,ビル全体など多くのセンサを必要とする環境には適用できない. そこで本研究では,ネットワークを介して全方位画像を伝送するテレプレゼンスシステムと遠隔監視システムを開発した.本テレプレゼンスシステムはネットワークを介して遠隔地の全方位画像を伝送し,その画像より利用者の視線方向の画像を実時間で生成し,提示する.本研究で開発したテレプレゼンスシステムを評価するために,有線ネットワークを用いた学内実験と有線・無線ネットワークを用いた学外実験を行った.共に30fpsで全方位画像を受信することができ,かつ時間遅延が少なく複数人が同時に異なる方向を見回しすることができるテレプレゼンスシステムの有効性を確認した.また,上述のネットワークを介したテレプレゼンスシステムを応用した遠隔監視システムは,監視環境側をサーバ側,監視者側をクライアント側としたサーバ/クライアントモデルである.まずサーバ側において監視したい環境を複数の全方位画像センサによって撮影し,その画像より移動物体を検出し,センサからの移動物体の方位を推定する.次にその全方位画像と方位情報を,ネットワークを利用してクライアント側に伝送する.クライアント側では時系列の方位情報を用いて移動物体の存在領域を推定し,監視者に対し物体方向の画像を提示することにより追跡を行う.本研究で開発した遠隔監視システムは,サーバ側において環境を自由に動く複数の人物の方位情報を約0.2秒の更新間隔で推定でき,かつ静止し続ける物体を背景と判断し,移動物体として検出しないことを確認した.またクライアント側においては人物の方位情報は約0.2秒ごとに更新され,それに基づいた移動物体の位置推定を行うことができた.さらに人物の方位情報は約0.2秒ごとに更新されるものの,提示画像は約0.05秒ごとに更新でき,遠隔監視システムとしての有効性を確認した.