その結果,アクセス集中によるサーバの処理能力の低下や,サーバ側のネットワー ク帯域の飽和により応答時間が長くなる. 応答の遅いリクエストの存在によりユーザは長時間待たされることになり,応答時 間は短いほどよいとされる.
応答の遅いリクエストを改善する方法として,従来のキャッシュサーバを用いる方 法と,P2P (Peer-To-Peer)キャッシュを用いる方法がある.
P2Pを用いたシステムでは,キャッシュサーバを用いる場合に比べ,高性能サーバを 用いる必要がなく,規模拡張性に優れ,設計や運用が容易であり,自律分散し動 作する. しかし,キャッシュ検索には複数のノードを経由するためネットワーク遅延の影 響が大きい, そのため,LAN環境以外の個人ユーザにとってキャッシュの検索時間は長く,性 能低下の原因となっている.
本研究では,このような問題を解決するために,検索遅延の影響が少なく,適用範 囲の広いP2PWebキャッシュシステムの提案を行う. 実装により,実現可能性とマルチホップによる遅延時間の影響を調べる. また,提案システムがLAN環境以外の個人ユーザの高速化を行えるかどうか検証し, 実現可能性の検証と,消費帯域とのトレードオフである検索開始待ち時間の評価 を行うためにシミュレーションを行う.
以上により,提案システムは遅延の影響を受けにくく,LAN環境以外の個人 ユーザに適用可能であることを示し,応答の遅いリクエストの改善できることを 検証した. また,高速化とトラフィック量はトレードオフであり,検索開始遅延時間の決 定指標を示した.