MPEG-7 出版の提案とウェアラブルコンピューティング環境への応用

兵 清弘 (0151085)


近年のネットワークのブロードバンド化は,映像配信サービスに代表される映 像コンテンツの流通を促進し,また記録媒体の大容量化は映像コンテンツの蓄 積を容易にしてきた.さらに計算機の高性能化や低廉化により,企業のみなら ず個人でも容易に映像を処理することが可能となってきた.この流れは今後も 変わらず,映像データはますます増加するであろう.こうした状況下で,映像 データの管理や流通,再利用における問題が生じてきている.

この問題を解決する一つの手段として,マルチメディア情報の内容記述のため の枠組を提供する国際規格である MPEG-7 の利用が挙げられる.MPEG-7 を利 用することで,シーン単位の映像検索が可能となり,メタデータの記述形式が 統一されたことにより,相互運用性の向上も期待できる.しかしながら,現状 での MPEG-7 の利用には幾つかの問題点があり,そのうちの一つに 「MPEG-7 インスタンスの作成には時間と手間がかかる」という問題がある.

そこで本研究では,その問題を解決する一つの手法として, MPEG-7 インスタ ンスを自動生成する,MPEG-7 出版という手法を提案する.MPEG-7 出版では, 利用するデータはそのデータ型や格納方法に限定されない.既存の技術を用い て格納されている,テキスト,静止画像,動画像などその対象は様々である. 映像の検索時には,大量の映像から所望のシーンだけを,また他のメタデータ からは映像シーンに関連する必要な情報だけを抽出する.すなわち映像とメタ データをスクラップしようというのが基本的な考え方である.こうすることで, 映像のメタデータが大量に存在する場合なども,それらを有効に活用すること ができる.

本研究では,その好例としてウェアラブルコンピューティング環境を取り上げ た.ウェアラブルコンピューティング環境では,ウェアラブルカメラで取得し た映像のメタデータとして多くの情報が存在する.そのため MPEG-7 出版とい う形態をとることでそれらを有効に活用することができ,また MPEG-7 インス タンスを作成する時間を大幅に短縮することができる.MPEG-7 出版を利用し た映像検索システムを試作し,実際にウェアラブルカメラ映像に適用した結果, 容易にビデオスクラップを作成できることを確認した.これをデモを交えて紹 介する.