摩擦の影響を考慮したロボットアームに対する適応制御

長沼 譲 (0151076)


本発表では,摩擦力のような物理パラメータの不確定性を有するロボットアームに対して適応追従制御系の設計法を提案する.産業用ロボットなどの多くの多関節ロボットアームの関節にはOリングの影響による摩擦力が存在する.そのため,関節角の応答には停滞現象が発生する.また,ロボットの持っている動特性は摩擦の影響から作業によって,あるいは時間によって変化することがある.このような現象は物理パラメータの不確定性と呼ばれ,非線形補償のみで十分な制御性能を得ることが困難となる原因となっている.

本研究の目的は,このような不確定性のあるパラメータを有する系に対し,軌道追従性を保証するために適応制御器を設計し、ロボットの滑らかな動作を実現することである.発表ではまず,研究室で保有するロボットアームの摩擦現象を示す.その摩擦力に対するモデルとして,静的なLIP摩擦(linear-in-parameters)モデルを用い,これをロボットアームのダイナミクスに導入する.さらにモデル化誤差に対する動的補償を含んだ適応則を設計する.また,このシステムが安定となることを示す.安定性はロボットダイナミクスの非線形項の中に現れる歪対称性行列を鍵として,リアプノフ関数を用いて証明できる.最後に設計した適応追従制御則の実装について,関節速度を得るための厳密微分器と具体的な制御則を示し,実験結果より有効性を確認する.