High Index DAE系に対する制御系設計

喜種 奈美 (0151037)


多くのダイナミカルシステムはDAE (Differential Algebraic Equation)で表されるが、 DAEはODE (Ordinary Differential Equation)にはない性質をいくつか持つ。 例えば、ODEとは違って、 DAEは滑らかでない入力に関してインパルスモードを持つ。 DAEとODEの違いを記述するのに用いられる 概念の代表的なものとしてindexがある。 厳密性を欠いて言うと、 indexとはDAEを等価なODEに変形するために必要な最小の微分回数である。 Indexが2以上の場合をhigh indexといい、indexが0や1の場合と区別される。

 

定義よりODEはindex 0の系である。 Index 1の系は、代数方程式が代数変数に関して解けるならば、 それを微分方程式に代入することによってODEに変形することができる。 すなわち、indexが0や1の場合は、 代数方程式を解いて微分方程式に代入すると冗長でないODEを得ることができるが、 非線形系の場合は代数方程式を解析的に解くことは一般に困難である。 従って、微分代数方程式で表されるシステムに対して 代数方程式を陽に解くことなしに取り組むことは重要な課題である。  

本研究では、非線形high index DAE系に対して、 微分変数だけでなく代数変数も含むフィードバック則を用いて 制御系の設計を行なうことを目的とする。 High index DAE系の場合は、indexが0や1の場合と違って 隠れた拘束条件が存在するので、それを明らかにする必要がある。

本発表では、始めにDAE、ODE、index、 及びレギュラー性の定義と研究背景について述べる。 次に、代数方程式を繰り返し微分することによって 非線形high index DAE系を冗長なexplicit ODEに変形する手法を提案する。 このときインパルスモードを避けるため入力に積分器を付加するが、 High index DAE系に取り組むもう一つの手法としてレギュラー化がある。 レギュラー化とは、代数変数か入力が陽に現れるまで 繰り返し代数方程式を微分することによってindexの次数を下げ、 状態フィードバック則を用いて微分変数間の拘束が入力を含まないように、 すなわち系がレギュラーとなるように変形する手法である。 ここではKumarらの提案したレギュラー化の紹介と改良を行い、 今回提案した手法と比較する。 得られたシステムに対して厳密な入出力線形化を行い、 目標値に追従させるように状態フィードバック則を設計する。 すべての状態変数を同時に推定する大域的に安定なオブザーバを構成し、 提案した手法の有効性を確認するためシミュレーションを示す。 最後に、まとめと今後の課題について述べる。