ハンドヘルドGPSを用いた屋外ウェアラブル型拡張現実感システム

小田島 太郎 (0151028)


近年,ウェアラブルコンピュータ上で拡張現実感(Augmented Reality:AR)を 実現する研究がさかんに行われている.これにより,従来では困難であった 屋外における拡張現実感が実現でき,観光名所などで建物へ 注釈情報を付加するといった観光ガイドとしての応用などが可能になる.

一般に拡張現実感を実現するためには,現実環境と仮想環境との 位置合わせが重要な課題となる. このためには,ユーザの位置と姿勢を計測する必要がある. 屋外においてユーザ視点位置を計測するためには 汎地球測位装置(Global Positioning System:GPS)を, 姿勢情報を取得するためにはジャイロセンサ等を使用することが多い. 従来の屋外型ARでは位置計測のためにディファレンシャルGPSや リアルタイムキネマティックGPSが用いられてきた. しかし,これらは精度良く計測が行える反面,現状では機器構成が 複雑になるためにユーザが装着して利用するには不向きである.

そこで本研究では,小型で携帯が容易なハンドヘルド式のGPSを用いた 屋外で利用可能なウェアラブル型拡張現実感システムを提案する. 提案手法では,位置情報の取得にハンドヘルド式のGPSを,姿勢情報の取得に ジャイロセンサを用い,ユーザの移動時には建物などに対する注釈情報を, 静止時には高い位置合わせ精度が要求される建造物などの仮想物体の 重畳表示を可能にする. なお,静止時には,高精度な位置合わせを実現するために, 各センサの誤差や同期ずれなどにより生じる仮想物体の表示位置ずれを, 画像処理により補正する. さらに,三次元地図を用いることで,現実物体と仮想物体の正確な 奥行き前後関係の表現を簡易的に試みた. 最後に,実際に屋外環境での実験を行うことでシステムの有用性を示す.