観測ノイズを考慮に入れた遠隔制御における遅延補償方式

澤村 良樹 (0151010)


近年ネットワーク技術の進歩やインターネットなどの普及によって, 遠隔制御をネットワーク越しに行なう研究が盛んになってきた. その一つとして通信経路に遅れのある場合のロボットマニピュレータなどのバイラテラル制御が挙げられる. またプラント制御関連においては, 従来型の集中管理システムに代わってフィールドバスという一種のネットワークを用いた制御システムが開発されてきた.

このネットワークにおける制御などを含めたディジタル通信において, 伝送経路においてパケットが欠落して情報が失われることがある. また伝送遅延が一定でなく, 伝送時間に最大遅延時間の保証がない. 先行研究により, この遅延やパケット欠落に対処できる新たなディジタルコントローラが提案された. このディジタルコントローラは理想的な連続時間システムで設計されたコントローラと, 制御対象およびコントローラの入力端に取り付ける2つのディジタル補償器で構成されている. 補償器は, 実システムの挙動を理想的な連続時間システムの挙動に近づける働きをする. 各補償器は現在から過去にさかのぼって n 点の入力を用いて補償器のディジタル出力を求める. しかしこの補償器は過去の入力を補外して新たな入力を作るといった方法であるため, 観測ノイズに弱いという欠点が挙げられる.

本発表では, まず代表的なロバスト制御系の設計手法である H∞ 制御を LMI を用いて設計することにより, 先行研究で弱点とされた“観測ノイズ”に対応できる新たなディジタルコントローラの設計法を提案する. また計算機を用いた数値シミュレーションにより今回提案する手法の有用性を示す. さらに LAN 上でディジタル通信を行うことにより, 仮想的な制御対象において実際に「遠隔制御」させたときの結果を示す.