大脳皮質培養神経回路網における符号化の刺激依存性

五十嵐 康伸 (0151004)


生体脳は、外部から入ってくる情報(刺激)を、膨大な数の神経から成るネットワークに よって効率よく処理をしている。その処理の仕方は、同じ生物種であっても千 差万別である。特に高等生物である哺乳類においては、同じ情報でも処理結果 は個体によって様々である。この処理結果の違いの原因は、先天的(遺伝的)な ものと後天的(経験的)なものにあると考えられる。どちらも神経ネットワーク の特性を決めるものであるが、後天的なものにおいては、感覚器からの刺激そ のものがネットワークの特性を変性させている。

生体の脳では、遺伝情報に従って神経細胞のネットワークが構築された後において、外 部からの刺激によってネットワークの情報処理の仕方がどのように変化するの だろうか。本研究では、まず遺伝情報によって発達した細胞体形状と 細胞膜のイオンチャンネルにより神経細胞がどのような活動をするかを 数値シミュレーションする。 次に、電気生理実験及び実験のデータ解析から、神経ネットワークが 強い刺激の前後でどのように情報処理を変化させるかを検証する。 この実験結果は、後天的に獲得するネットワーク構造に関して新たな知見を 示唆するものである。