視覚障害者のための状況推定を導入した電子白杖

立石敏隆 (9951069)


視覚に障害を負うことは、情報収集という点で致命的な被害を被ることを意味する。そのため、晴眼者にとっては日常の行動である屋外での歩行も、大変危険な行為となる。視覚障害者が屋外を歩行するには何らかの支援が必要であり、介助者や同伴者による手引が最も効率的で安全であると言われている。しかし、自立を目指す視覚障害者は単独での歩行を希望している。本研究では電子工学の技術を用いて、手引者が視覚障害者に行なうような支援システムの構築を試みる。手引者は、視覚障害者の周囲にある障害物を、必要のない情報を一切削除し、視覚障害者に簡潔に伝達する。そこで、計算機がセンサから得られた情報を分析する状況推定という提案概念を導入した電子白杖システムを提案する。状況推定には、周囲の形状を分析するために周囲物体の外殻を形成する面を歩ける面と歩けない面に大別し、その組合せから状況分析をおこなう壁床戦略を提案する。また、壁床戦略に必要な面を瞬時に取得するための、複数点を同時に計測する距離計を試作した。

本発表では、試作システムのセンサ精度が十分に高かったこと、計測対象を正しく状況推定したこと、インターフェイスによってほぼ正確に被験者に情報伝達がなされたことを、評価実験結果により示し、本システムの有効性を示す。