分散基地局システムにおける適応変調による周波数利用効率の向上に関する研究

山口 智生 (0051113)


本研究は、移動通信において周波数利用効率を改善するために、サービスエリア内の各端末が同一周波数帯域を用いて同時通信を行う分散基地局システムに関するものである。分散基地局システムは、複数の基地局により受信された信号を光ファイバを通してRF信号の形態のまま制御局に集め、制御局で干渉除去を行うことにより、同一周波数帯域での通信を可能とし、周波数利用効率を向上するシステムである。しかし、複数の端末がある基地局の周りに偏った場合、受信信号に伝搬路の伝搬特性の近い信号が重なり合うことがあるため、同一周波数干渉除去では除去困難な干渉が生じ、特性が低下するという問題がある。また、フェージングによる受信信号強度の変動により伝送品質が劣化する。

そこでこれらの問題を解決するため分散基地局システムにおける新しい適応変調方式を提案する。提案方式は同時通信を行う端末をシステム全体のスループットが高くなるように選択することで、端末の分布によって生じることのある除去困難な干渉を防ぐことができる。さらに伝搬路の状況に応じて変調多値数を切り替えることで、伝送品質を保証しつつ高い周波数利用効率を可能とする。提案方式を適用した分散基地局システムにおける伝送特性を計算機シミュレーションにより明らかにし、従来の分散基地局システムに比べ、伝送品質及び周波数利用効率の点で改善されていることを示す。