分子生物学におけるXMLデータ統合利用システムに関する研究

的場 登 (0051102)


分子生物学の分野において,多くのゲノム解読プロジェクトが進行し,成果は数多くの生物種の塩基配列の解明としてあらわれている. それらの成功の背景には様々な要素が絡むが,その中でも,計算機技術の進歩やインターネットの普及によるネットワークを介したWebサービスが果たす役割は大きい.
しかし現在,分子生物学データを扱うWebサービスはその多くが独立したものであり,データ形式や表示方法は独自で異なる. これからは異種生物間における遺伝子の機能を比較するといった新たな検索要求が増してくることが考えられるが,そのためにはこれらの仕組みは統合あるいは連携したものでなければならない.
本研究では,分子生物学XMLデータの統合利用システムを提案する. 様々な所で公開されている分子生物学XMLデータ(主に遺伝子に対する註釈付けデータ)をシステム内に保持し,問合せにはXML問合せ言語であるXQueryを用いることによって,複数の異なる構造のXMLデータを統合的に扱えるようにしている. また分子生物学XMLデータがもつGene Ontologyへの参照記述を利用することにより,システムがサポートする分子生物学データを緩やかに統合し,データが表現する生物学的機能の階層表現を統一的に提供できるようにしている.
これにより,利用者である分子生物学者にとって一度に比較することが難しい,異種生物間のデータへの横断的なアプローチを可能にしている.