題目

松崎 大河 (0051050)


近年医療分野において専門分化が進み、専門医が増加の傾向にある。また、21世 紀の日本は、高齢化、少子化社会を迎える。医師間の情報共有や医師・ 患者双方の身体的負担という問題が生じる。これらの問題を解決する手段として 遠隔医療があげられる。その中でも全国の一般の診療所の4割を越えて普及さ れている超音波診断装置に着目した。超音波診断装置は、非侵襲的で扱いやす い。しかし、プローブ操作および画像診断においては豊富な知識と経験を必要と する。超音波画像取得の際に、技師が他の専門医の意見を仰いだり、在宅医療に おいて医師が患者側へ超音波プローブ操作の指示を伝達するといった必要性が考 えられる。本研究では、専門医が遠隔地から超音波プローブの操作を指示し、患 者の超音波画像を実時間で取得する遠隔超音波診断システムを構築した。この遠 隔診断システムでは、所望の部位の超音波画像を取得するために、患者の体表面 にあてるプローブの位置や姿勢を、的確に患者側の超音波プローブ操作者に指示 する必要がある。患者の体表面の三次元形状を取得し、伝送するこ とによって、プローブ操作者と専門医の双方がプローブ操作を行っている環境を 共有できる。まず、プローブ操作者の環境において、カメラとプロジェクタとを 設置し、患者の体表面の三次元形状計測を行い、取得した形状データと映像とを 専門医に伝送する。専門医側に伝送した形状データをもとに患者の形状を再構成 する。専門医は再構成された患者の形状をもとにプローブ操作の教示を行う。専 門医は、より直感的に患者の形状を把握するために力覚提示装置を用いて、プロー ブの操作指示情報を患者側超音波プローブ操作者に伝送する。患者側では、プロー ブ操作に関する指示内容を、視覚で理解できるように変換し、形状計測に用いた プロジェクタから患者体表面に直接投影する。この際に、患者体表面の形状を考 慮し、指示内容が操作者視点から自然に見えるように投影情報を自動的に調整す るインタフェースを提供する。 本研究により、仮想空間において患者の形状を共有することによって、医師は、 あたかも目の前に患者がいるかのような空間を持つことが示された。