WWWブックマークを用いた協調的情報推薦ネットワークの構築に関する研究

濱崎 雅弘 (0051084)


本発表では,提案する協調的情報推薦ネットワークの構築に必要な,三つの技術について解説を行う.

本論文では,共通話題ネットワーク,分類観点,仲介者モデルの三つを要素技術とする,利用者間の関係に基づいた情報推薦の方法である協調的情報推薦ネットワークを提案した.協調的情報推薦ネットワークとは,個人間の情報推薦がネットワーク状に広がることで,各ユーザから見ると,自分と信頼関係にある相手(隣接ユーザ)と情報交換をしているだけだが,全体では協調的に情報推薦が行われるネットワークである.このようなネットワークを構築するために,本論文では,個人間をつなぐ手法として共通話題ネットワークを,個人間の関係を評価する指標として分類観点を,個人間ネットワークを拡張する手法として仲介者モデルを用いる.

他者の知識を利用した情報収集支援は,情報過多への対処として,機械処理の持つ限界である価値判断の困難さを克服した,有力な手段である.他者の知識を有効利用するためには,そのためにはお互いの知識を使いやすい形で表現する必要がある.その手法として本論文では共通話題ネットワークを用いる.共通話題ネットワークとは,人と人の関係をそれぞれが関心を持っている話題の繋がりによって表現したものである.本論文では,人の知識としてWWWのブックマークを用いたが,その場合,フォルダを話題とし,その繋がりによって人と人の関係を示す.フォルダの繋がりはそのフォルダ内にあるページの類似によって判断される.被験者に推薦情報として,情報そのものであるWebページとそれを持ち主の判断によってまとめた話題(ブックマークフォルダ)を提示し,評価してもらった.結果,話題の方が高い評価を得られ,話題を用いて人と人の関係を表現することの有効性が示された.

他者の知識を利用して情報収集支援をする場合,相手によってその効果が大きく左右される.そのような情報収集支援をシステムが行うためには,人と人の関係を,それが情報共有するに際して有効な関係であるかどうかを評価する必要がある.その評価指標として,本論文ではカテゴライズ近似度を提案する.カテゴライズ近似度は,その人がどのように分類を行っているかという分類観点の類似を元に求められるパラメータである.この指標を用いて仮想的なコミュニティを作り,評価実験を行ったところ,実社会のコミュニティ内で行った場合よりも情報推薦の効果があった.このことから,分類観点に基づくカテゴライズ近似度が人のつながりの指標として有効であることがわかった.

互いに知識交換を行うためには,互いの信頼関係が必要である.人の知識をサーバに集積するモデルが破綻するのは,大抵その信頼関係の均衡が崩れたときである.本論文では,その解決策として既に築かれた関係を重視する.だが,既に築かれた関係内だけで情報共有ネットワークを作っていては,拡張性がない.そこで既存の関係を利用してネットワークを拡張する,仲介者モデルを提案する.これは,共通の友人が仲介者となって,新しい友人を得るという方法をアルゴリズム化したものである.すなわち,仲介者は自分の友人の中で関係が深いと思われる2者の関係をその両者に新しい関係として提案する.この仲介を繰り返すことで不完全な関係ネットワークから適切な関係によるネットワークが自律分散的に生成される.実際に,中央集権モデルによる最適解との比較をシミュレーション実験により行った結果,ほぼ遜色のない状態へ収束することがわかった.