位置情報を用いたアドホックネットワークルーティング

橋本 英卓 (0051082)


アドホックネットワークは,そのネットワーク構成自体が動的なものであるため,ネットワーク内でパケットを送る端末を指定する際,従来の静的構成のネットワークに使用されるホスト名を用いた端末の特定が困難である.また,アドホックネットワークにおける通信は,ブロードキャストを基本として行われ,帯域の消費も問題となる.そこで,本論文では,端末の位置情報を利用し,アドホックネットワークにおけるルーティングオーバーヘッドを削減する指向性DSR,および,セル分割ルーティングの提案を行う.指向性DSRは,端末の位置情報を活用するように,DSRをLocation-Aware方式に拡張したものであり,クエリパケットの伝搬方向に応じたペナルティーを課すことにより,経路探索時のブロードキャストを局所化し,ルーティングオーバーヘッドを軽減する手法である.また,セル分割ルーティングは,Location-Aware方式を用いた広域でのアドホック環境を実現する手法であり,空間を格子状に分割し,各セルに設けられた代表が,セル内のノードの位置情報管理し,ノード検索を階層的に行うことでオーバーヘッドを軽減する.さらに,本論文では,指向性DSRによるルーティングオーバーヘッドの削減効果をシミュレーションを通して評価する.結果,指向性DSRは,ルーティング時のクエリパケットの送信量を,端末位置情報を用いない場合に比べ,約$30\%$まで抑えられることが確認された.