高速移動受信時におけるOFDMの伝送特性改善に関する研究

高柳 英晃 (0051052)


OFDM (Orthogonal Frequency Division Multiplexing)はマルチパスフェージングによる伝搬路の周波数選択性に対する耐性を有しており,ITS (Intelligent Transportation System),地上波ディジタル放送などの広帯域ディジタル無線通信システムの伝送方式への適用が積極的に検討されている. しかし,移動受信体が高速移動することで生じる伝搬路時変動により, 伝送特性劣化が起こることが大きな問題となっている. 伝搬路時変動対策として現在,直線アレーアンテナで受信した信号を空間領域で内挿することにより,大地に対して静止した地点の受信信号を推定し,ドップラー周波数の発生を抑える方式が提案されている. しかし,その方式にはいくつかの問題点が存在する. その問題点として,信号を受信する際にアレーアンテナのアンテナ素子間で電気的な洩れが発生する相互結合の問題,空間内挿処理時にA/D (Analog-to-Digital)変換部がアンテナ素子数だけ必要なことによるハードウェアの負担,そしてマルチパス環境下におけるフラットフェージングの影響による振幅の落ち込みといった点がある. 本研究ではその方式を基本とし,問題点を解決し伝送特性を改善する手段として,新しい高速移動受信による伝搬路の時変動を補償する方式を提案する. まず,アンテナ間における相互結合の実験による測定とその影響,更には除去方式の検討を行う. 次に,内挿処理時に問題となるハードウェアの負担と相互結合の問題を解決するために,アレーアンテナ素子切替による高速時変動補償方式を提案する. 次に,空間内挿型の補償方式を空間ダイバーシチと組合せることで,さらなる伝送特性の改善を可能とする方式を提案する. 本論文では,計算機シミュレーションによりそれぞれの提案方式の伝送特性や,パラメータに対する解析を行い,それに基づき考察を行い,高速移動受信における伝搬路時変動に対する有効性を確認する.