指筋電と把持/負荷力の同時計測に基づく 人の把持力計画に関する研究

栗田 雄一 (0051034)


人は把持運動を繰り返し行い,把持対象となる物体の重量や
表面の摩擦係数などの物体特性に関する知識を感覚情報を通して得ることで,
物体に与えるべき合力の事前計算の精度が高まり,
効率的な把持力制御を行うことができるようになっていく.
しかし,このような物体特性が把持運動に先立って脳内で
行われていると考えられる把持力計画に及ぼす影響および把持力計画が
運動出力に及ぼす影響に関しては不明な点が多い.
本論文では,物体重量の変化と運動条件の変化が把持力計画を介して
運動に及ぼす影響について考察を行うことを目的として,
短母指外転筋と母指内転筋における筋電と把持/負荷力の同時計測を行った.
実験の結果,タイマの音に合わせたリズム運動を被験者に要求すると,
把持/負荷力と短母指外転筋の筋電反応に物体重量の影響が現れることを確認した.
また物体重量をランダムに変更した場合,把持力と短母指外転筋の筋電反応は
直前に把持した物体重量の影響を受けることを確認した.
しかし,リズム運動を被験者に要求しない場合,短母指外転筋の
筋電反応に物体重量の影響を確認することはできなかった.
この結果は,把持力計画は物体重量変化の影響を受け,
また運動条件によって把持力計画が運動出力に及ぼす影響に
変化が生じることを示唆する.