本発表では、以下のことを説明する。
l 本研究の目的
1. 大脳皮質における単一細胞の情報処理機能の可能性を、単一スパイク応答を用い考察、検証する
2. 減衰振動型スパイキングニューロンでHodgkin-Huxley(H-H)ニューロンの発火特性を模擬できるかを検証する
l 減衰振動型スパイキングニューロンによるH-Hニューロンの膜電位の近似
1. H-Hニューロンの単一スパイク応答の減衰振動関数による近似
2. 減衰振動型スパイク応答関数の線形和を用いた、H-Hニューロンの膜電位の近似
l 興奮性と抑制性の背景入力による、H-Hニューロンの単一スパイク応答とそのパワースペクトラムの変化
1. 興奮性背景入力による単一スパイク応答の変化
2. 抑制性背景入力による単一スパイク応答の変化
3. 興奮性と抑制性の背景入力による単一スパイク応答の変化
4. 興奮性と抑制性の背景入力による減衰振動関数のパラメータの変化
---興奮性背景入力により主に振幅と周波数が変化
---抑制性背景入力により主に減衰が変化
5. 単一スパイク応答の変化から、細胞の情報処理機能の変化を考察
---時間的に同期した入力の検出能力(同期入力検出)の向上
---固有周波数の変化による共鳴の変化
---興奮性と抑制性の背景入力がほぼ同じときに情報処理機能の変化が顕著にあらわれる
l 興奮性と抑制性の背景入力による、細胞の情報処理機能の変化の、シミュレーション実験による検証
1. 同一時刻付近に密集して入力されたスパイク列(同期入力)に対する発火応答
---同期入力検出の向上を検証
2. 周期的なポアソンスパイク列を入力したときの発火応答
---共鳴する周期の変化
(1と2はH-Hニューロンと減衰振動型スパイキングニューロンで比較する)
l 本研究のまとめと考察
1. 興奮性と抑制性の背景入力による、単一スパイク応答の変化から、細胞の同期入力検出能力と共鳴周期の変化を検証した
2. 興奮性と抑制性の背景入力がほぼ同じときにこの情報処理機能の変化が顕著にあらわれることを考察した
3. 減衰振動型スパイキングニューロンがH-Hニューロンの情報処理機能の変化を模擬できることを示した