従来から、信頼性マルチキャストでは、ネットワークで発生したパケットロス に対して、前方向誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)方式や、 再送制御(ARQ:AutomaticRepeat ReQuest)方式を用いることにより、 パケットロスを回復させる方式が提案されている。
一般に、実時間性を重要視するメディア伝送では、実時間性の確保と パケットロス回復のためのトラヒックを抑制するために、FECが用いられる。 しかし、想定した以上のパケットロスが発生した場合、パケットロスを 回復することができない。一方、ARQの場合、すべてのパケットロスを 回復することは可能であるが、実時間性の確保と、パケットロス回復のための トラヒックを抑制することが難しい。
本論文では、数秒程度の遅延が許されるメディア伝送に対し、 FECの設定以上のパケットロスの回復のために、ARQによる信頼性マルチキャスト を用いて、パケットロスを低減させる。ARQの方式として、ルータの改造が不要で、 実現が容易なSRM(Scalable Reliable Multicast)とPGM(Pragmatic General Multicast)を用いた場合に、実時間メディア伝送で生じる課題と、 課題を解決する改善方式を提案し、シミュレーションにより有効性を評価する。
また、提案方式(SRM、PGM)とFECに対し、受信ノード数に応じた ネットワークの使用帯域、および伝送遅延の観点から性能比較を行い、 FECとARQを併用した方式の有効性に関しても評価する。 なお、提案方式は数秒程度の遅延が許される 実時間メディアへの適用を目的とし、 ルータやIPパケットの改造が不要な導入コストの 低い信頼性マルチキャスト方式を実現する。