題目 信頼性マルチキャストを用いた実時間メディア伝送に関する考察

窪貴志 (0051031)


近年、映像や音声などのマルチメディア情報を複数の受信者に同時にリアルタイム で配信できるインターネット放送システムが注目を浴びている。 また、システム実現のための要素技術として、信頼性マルチキャストの 研究開発が盛んに行われている。

従来から、信頼性マルチキャストでは、ネットワークで発生したパケットロス に対して、前方向誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)方式や、 再送制御(ARQ:AutomaticRepeat ReQuest)方式を用いることにより、 パケットロスを回復させる方式が提案されている。

一般に、実時間性を重要視するメディア伝送では、実時間性の確保と パケットロス回復のためのトラヒックを抑制するために、FECが用いられる。 しかし、想定した以上のパケットロスが発生した場合、パケットロスを 回復することができない。一方、ARQの場合、すべてのパケットロスを 回復することは可能であるが、実時間性の確保と、パケットロス回復のための トラヒックを抑制することが難しい。

本論文では、数秒程度の遅延が許されるメディア伝送に対し、 FECの設定以上のパケットロスの回復のために、ARQによる信頼性マルチキャスト を用いて、パケットロスを低減させる。ARQの方式として、ルータの改造が不要で、 実現が容易なSRM(Scalable Reliable Multicast)とPGM(Pragmatic General Multicast)を用いた場合に、実時間メディア伝送で生じる課題と、 課題を解決する改善方式を提案し、シミュレーションにより有効性を評価する。

また、提案方式(SRM、PGM)とFECに対し、受信ノード数に応じた ネットワークの使用帯域、および伝送遅延の観点から性能比較を行い、 FECとARQを併用した方式の有効性に関しても評価する。 なお、提案方式は数秒程度の遅延が許される 実時間メディアへの適用を目的とし、 ルータやIPパケットの改造が不要な導入コストの 低い信頼性マルチキャスト方式を実現する。