ルータ負荷とグループ負荷を考慮した受信者を明示するマルチキャストプロトコルの定量的評価

城戸博行 (0051028)


IP Multicast は,同一のデータを多人数に同時配信を効率よく行うための技術として提案された.しかし,現在も実用化されていない.理由として,制御メッセージによってトラフィック管理が容易でなくなる,ルータ資源消費量が大きく運用に難がある,グローバルにマルチキャストアドレスを割り当てる必要があり導入コストが高い,などが挙げられる.テレビ会議など少人数へのデータ同時配信においても配送コストが高い.

そこで,近年考案されたのが受信者を明示するマルチキャストである eXplicit multiCAST(XCAST) 方式である.この方式は,少人数(100人程度まで)に特化し,多数のグループでスケーラビリティを持たせるように提案された.しかしながら,XCAST 方式の IP Multicast に対しての有効性は定性的にしか示されていない.また,Xcast4,Xcast6,SIM などそれぞれ異なる性質を持つXCAST プロトコルが存在する.これらのプロトコルの比較も定性的に行われているに過ぎない.

そこで,本論文では,従来型マルチキャストである IP Multicast 方式の代表的なプロトコルと PIM-SM を選び,XCAST 方式との定量的比較評価,及び XCAST 方式プロトコル同士である XCAST4 と SIM の定量的比較を行う.実際のインターネットに各マルチキャストプロトコルを導入する際の性能を測るために,JGN (Japan Gigabit Network) のネットワーク構成を用いてシミュレーションを行った.プロトコル性能比較には,グループ数,各グループのメンバー数,送信速度を変化させたときの回線効率,耐久性能,ルータ負荷に表れるスケーラビリティを評価した.評価結果として,それぞれのプロトコルの利点と欠点を考察した.